脊髄損傷に対する幹細胞点滴治療(脊髄再生医療)
脊髄損傷について
脊髄は脳と手足をつなぐ神経の通り道(神経回路)で、不慮の事故や怪我などで脊髄の神経に傷がつくと感覚や動きが障害され、重度な時は全く動かせず、感覚がない状態(運動感覚完全麻痺)になります。
損傷の程度によって、一部の動きが残っている状態(不全麻痺)には歩ける状態から、わずかに手足が動かせる状態まで大きな幅があります。
こうした脊髄神経は一度損傷してしまうと回復させることはほぼ不可能で、麻痺も怪我をして数か月はある程度の自然回復がみられるものの、そのあと回復させる治療法はないとこれまでは考えられてきました。
また、脊髄損傷は患者さんご本人の健康・生活に影響するだけでなく、ご家族にも多大な負担が生じます。
国内では、推定10万人以上の脊髄損傷の患者が存在しており、毎年約5000人の患者が増えているといわれています。
しかし近年、研究や技術が進歩し、再生医療で回復不能とされた脊髄損傷患者様が回復する事例も報告されています。
当院の「幹細胞点滴治療」は神経の細胞に分化する機能を持つ「幹細胞」を用いた再生医療です。
この治療は点滴により、神経のダメージを回復・再生させることを目指します。
幹細胞点滴(脊髄再生医療)の特徴
・点滴によって損傷部位へ幹細胞を届けます
幹細胞には損傷部位に集積する性質(ホーミング作用)があります。そのため、幹細胞を点滴すると、損傷している部位に幹細胞はおのずと集積して治療効果を示すと考えられています。
・脊髄以外にも治療効果が期待できる疾患・部位が幅広い
局所注射では到達できない部位に幹細胞を作用させることができるため、脊髄損傷・中枢神経障害以外にも脳梗塞、認知症、骨粗しょう症、糖尿病、肝臓病など様々な疾患に幹細胞の効果をもたらすことが期待されていると言われています。
・日帰りで行う治療です
入院の必要はありません。治療はすべて日帰りで行われます。
・すべての脊髄損傷の患者様が対象です
急性期・慢性期、損傷の程度を問わず、すべての脊髄損傷の患者様に対して治療を行うことができます。
・脂肪を採取して幹細胞を培養します
腹部か膝の「脂肪」を採取し、その中の幹細胞を培養して治療に使用します。自分の組織を使った治療なので安全性が高い治療です。
幹細胞の点滴注射による神経の回復のメカニズム
神経のダメージに対して、投与された幹細胞は以下のような仕組みで作用します。
●投与後早期(直後~数週間)
点滴投与された幹細胞が損傷部位に集まり、神経栄養因子を介して神経栄養・保護作用や抗炎症作用、血管新生作用をおこします。
●投与後後期(数週間~数か月)
幹細胞が神経系の細胞へ変化し、神経線維の修復がおこり神経が再生されます。
【副作用について】
●腹部またはひざの脂肪採取部分の痛み、感染、血腫、内出血の可能性があります。
※痛みは鎮痛剤でおさまる程度です。
●幹細胞投与時、塞栓症のリスクがわずかにあります。
※点滴前の細胞に対する塞栓予防処置、および塞栓予防のための点滴装置を使用します。
【治療効果の個人差について】
●治療の効果が現れる時期や、どの程度の効果がみられるかには個人差があります。
治療の流れ
- 来院1日目:
カウンセリングおよび治療説明 - 細胞培養(約1ヵ月)
- 来院2日目:
点滴にて投与(日帰り) - 経過観察・アフターフォロー