そもそも関節の再生医療ってどんなもの?
本日は、まだまだあまり知られていない関節の再生医療について説明させていただこうと思います。
<再生医療の定義>
”再生医療”と聞くと”壊れてなくなったものが復活する”というイメージをお持ちではないでしょうか?
もちろん、これまで回復不能といわれたものがいわゆる”再生する”という事を目指す治療の事も再生医療とはいいますが、”国が定めた再生医療の定義”は違います。
”細胞を使った治療”
これを再生医療と定義しています。ちょっとイメージと違うかもしれませんね。
臓器移植後の拒絶反応を治療するための幹細胞を用いた治療など
壊れた組織の回復を目的としていない再生医療もたくさんあるのです。
<関節の再生医療の種類>
①PRP(成長因子)治療
②幹細胞治療
研究ではいろいろな方法が試されていますが、現在、実際に現場で行われている治療(保険適応外)は上記の2つになるのでそれぞれについて説明します。
①PRP治療
PRP治療では組織の再生を目指すものではなく、痛みなどの症状の軽減が目的になります。
主成分は血液中の血小板に含まれる数種類の成長因子で、
効能は、炎症を抑える、治る(組織を修復させるための)反応を起こさせる、というものになります。
ケガなどの急性期のものに対しては”早く治す”効果を、慢性の関節痛などに対しては”痛みの軽減”を期待できます。
効果持続期間は1~1.5か月程度で、
元々のダメージが少ない場合には1回で症状が回復するケースもありますし、回数を重ねる事で徐々に症状が回復していくケースもあります。
さらにPRPにも現在流通しているものは大きく分けて2種類あります。
A:採血当日投与タイプ
B:後日投与タイプ
Aの採血した当日に投与するタイプは以前からおこなわれていた手法となります。
メリットは当日投与できるのでケガから早く回復したい方に適していることですが、
一方でデメリットは投与後の痛みが強く出る可能性があります。
これは、このタイプのPRPには白血球がたくさん含まれるのですが、この白血球の作用で一時的に強い炎症がおこるために痛みが出る場合が多いです。
Bの後日投与タイプは比較的新しい手法で、Aの従来タイプのPRPを凍結乾燥(フリーズドドライ)させたものになります。
メリットは同じ採血量で比べると含まれる成長因子量がAよりも2~8倍多いとされるのでさらなる治療効果が期待できます。また白血球が含まれないので、投与後の痛みも比較的弱い事が多いです。
デメリットは採血から投与まで3週間程度かかるためすぐに行いたい方には不向きな事です。
②幹細胞治療
症状の改善とともに組織再生を目指す治療です。
組織の再生の3条件:幹細胞、細胞環境(サイトカインや成長因子)、足場
ただ単に幹細胞を投与するだけでは組織再生は見込めません。
上記の3つをそろえないと組織は再生しないとされますが、
この点を理解して治療しているドクターはまだ少ないように感じます。
(当院では上記3条件を満たしさらにその効果を高める工夫をしています)
<方法>
ご自身の幹細胞が存在する組織を事前に採取し、その中から幹細胞を取り出し、細胞を培養することで増やして細胞環境を整えたり細胞の活性化を促す成分や足場となる物質と共に関節へ投与する、と手順です。
基本的には1回投与して経過をみますが複数回投与の方が効果が高いとされます。
<効果>
痛みなどの症状を軽減させる事、壊れた組織の回復、となり、
<副作用>
投与後、一時的に痛みが出るケースがあります。
ただ、基本的に拒絶反応、アレルギー反応などの副作用はなく、入院なども必要ないため患者様への負担の少ない治療といえます。
<課題>
クリニックによってかなり方法が違います。
・幹細胞をどの組織から採取するか?
・幹細胞を何個まで増やすか?
・細胞環境を整えるためのサイトカインや成長因子を投与しているか?
・足場となるものをどう考えるか?
・投与時、投与後のマネージメント
などなどかなり多岐にわたりクリニック間で差が出る可能性があります。
当院ではこれらの点に関してエビデンスに基づきながら独自の工夫もおこなっています。
まだまだ発展途上の治療ではありますが、これまでではありえない効果を発揮するケースもあります。
今後、さらに治療効果があがるような工夫をしていきます。
長文失礼いたしました。